『TPPとくらしを考える学習会』
2016/6/30(木)夜開催の『自分で食べるものを選びたい ~食品の表示とTPP~』開催報告を3人の報告者によって分けて報告します。
報告1「食品表示の監視指導の現場から」
http://tpposaka.hatenablog.com/entry/2016/07/09/160544
報告2「TPP協定と食品の表示問題」
http://tpposaka.hatenablog.com/entry/2016/07/09/161133
報告3「食品表示で懸念されること」
http://tpposaka.hatenablog.com/entry/2016/07/09/165258
■報告2「TPP協定と食品の表示問題」
報告者 樫原正澄さん(関西大学教授・TPP大阪ネットワーク代表)
今回は、TPP協定の第8章「貿易の技術的障害(TBT)措置」を手掛かりに、食品表示問題を考えたい。
結論を初めに述べれば、政府の発表のとおり「TPP協定によって日本の食品行政の制度変更はない」といえるが、それはTPP協定において詳細・具体的に食品表示に記載されていないためである。つまり、今後の運用ならび交渉によって、食品表示制度は変更されるということである。
TPPのTBT章は、WTO(世界貿易機関)のTBT協定に準じて構成されている。全体的にみると「貿易促進を強調している」ことが特徴となっている。そこで、TPP協定の運用において、このTBTの精神(貿易促進)が生かされることとなる可能性が高い。
◇「透明性」の確保とは
第7章のSPS(衛生食品検疫)との関連をみると、従来の「透明性」はどちらかといえば「基準策定プロセスの公正性の担保と、それの各国への通知」という意味合いが強かった。
しかし、TPP協定第8章第11条「TBT小委員会の設置」においては、「透明性の確保」に関わって「利害関係者の関与」が記載されており、この現実的な運用が鍵を握ることになると考えられる。
海外の利害関係者という記述があるが、これはどう読んでも企業関係者のことを意味しており、具体的に運用した際には、日本での規制強化に反対することは必然となるであろう。このように、今後の運用に委ねられている「利害関係者の関与」が協定文に書かれており、問題を残している。
◇「TBT小委員会」の設置
WTOと同様に、TPPでも設置することになっている。ただし、委員会の性格や機能については、何も規定されていない。政府の説明のとおり、単なる情報交換の場であればよいが、そうはならないのではと推測される。
国内ルールを設ける際に「利害関係者の関与」を規定している。また、新たな規定を実施する60日前までに、相手国の利害関係者に意見を聞かねばならないとされており、日本の規制を強化しようとすれば、多くの解決しなければならない課題を抱えることとなる。
現実的には、規制緩和を促進する方向を強める危険性が高いといえる。
すでに、外務省は、2011年時点でTBTに関して、「透明性の手続き整備」や、「個別分野についての規定」について懸念を表している。これらの懸念についても、国会であきらかにすべきだ。
また、日米並行協議において、日本政府は、外国貿易障壁報告書の意向に沿った対応に終始しており、日本のこれまでの交渉経過や、食品行政を考えると、不安材料はいっぱいである。