「ほんまにええの?TPP大阪ネットワーク」

私たちは、日本政府にTPP交渉における「国民への説明責任を果たす」こと、衆参農林水産委員会における「国会決議を遵守する」ことを求め集まった、大阪で活動する約30団体のゆるやかなネットワークです。FBページはこちらから→https://www.facebook.com/tpposakanet/

5/24開催報告 「過去からよみとく未来予想図~外国貿易障壁報告書などを受けて~」①<報告1>食料輸入と食の安全をめぐって

5月24日(日)開催 ほんまにええの?TPP大阪ネットワーク主催

TPPとくらしを考えるシンポジウム①

「過去からよみとく未来予想図~外国貿易障壁報告書などを受けて~」報告

 

※7/12開催のパート2案内はこちらから 

当日配布資料はこちら当日の配信動画はこちらから。

 

<報告1>食料輸入と食の安全をめぐって 

飯田秀男さん (全大阪消費者団体連絡会事務局長)

 

1.食料輸入に対するある警告

まず、有名なジョージブッシュの演説の紹介から始まりました。

「食料自給できない国を想像できるか。それは国際的圧力と危険にさらされている国だ。」

これはどこを指しているのか?日本ではないか。

米国からの警告として他にも「エサ(飼料)穀物を全て米国から供給すれば、日本を完全にコントロールできる。」というものもある。

 

2、食料・飼料輸入量と自給率と交渉の推移

 今から50年前は日本の食料自給率はカロリーベースで70%超えていたが、近年40%をうろうろしている。近年は3000万トン以上の食品を輸入し続けている状態。飼料自給率は30%以下と低迷。

輸入が増えてきたこの間に、どういった交渉を経ているのか。

 

 1955年にGATTに参加。1970年代以降、米国から輸入への圧力が、日本にかかり始め、78年の牛肉オレンジが第1のピーク。

1994年末にウルグアイラウンドが決着し、1995年のWTO加入する際に、小麦・大麦・乳製品等の輸入数量の制限が撤廃された。

1999年にはコメの関税化が行われた。高い関税ではあるものの、自由化への道が始まった。

2003年米国でBSEが発生。一旦、輸入禁止になったものの、輸入規制緩和の圧力がかかり、徐々に輸入月齢制限が引き上がっている。

 

3、日米政府間の協議がどのように進んできたのか。

2011年までのものは、外務省HPで公表されている。しかし安倍政権後、交渉内容が公表されていない。 

 

具体的にどういった方法で規制緩和への圧力がかかっているのかをみると、主に、この3つだろう。 

①日米両国の政権同士による合意に基づく協議

②USTRによる外国貿易障壁報告書。毎年度、日本語訳が外務省HPで公開される

③在日米国商工会議所意見書に基づく個々の具体的な要求書

  

③は、戦後すぐにできた組織。

現在は40数か国の企業が加入し、60を超える委員会があり、意見書をつくり日本政府に対して政策提言している。

これまでの政権で出されている規制緩和政策を誘導するような提言がでている。(以下主な意見書をリストアップしたもの)

 

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 4、規制緩和要望書にみる歴史

①政権による合意の基づく協議

日米交渉のやりとりがまとまった文書が初めて出るのは1996年。「規制緩和の提案」「行政に関する法律、規制及び慣行の改革」「競争政策」の3つのジャンルで非常の多くの分野が列挙されている。

 

2011年版では日米経済調和対話での米国側関心事項は、大分類でも12項目。知的財産権、郵政、保険、透明性、運輸・流通、エネルギー、医療品・医療機器など。

 

②外国貿易障壁報告書

2014年はやり取りが公表されていない。大項目は7分野。 

2015年版がこの4月公表された。大項目は8分野。今回、「衛生植物検疫」が新たに出てきたのが特徴。

 

ずっと要求され続け、日本政府がそれを実現すると翌年には要求事項が削除されている。実現しないと毎年同じ文言が並んでいる状況。

 

③在日米国商工会議所の意見書の要望はといえば、それぞれいつまで有効かと書いているのが特徴的。ここには、IRリゾート、医薬品等の診療報酬改定や、農協改革についても書かれている。

 

 

5、食の安全を脅かす米国の要求

BSEは「管理されたリスク」として、現在、月齢40か月までの緩和要求されている。

 

レモンはスーパーで「TBZを使っています」と表示されているのは、厚生労働省が今は食品添加物と見なしているから。これを表示しなくてよいように「農薬扱いにしろ」と言っている。

有機農産物を輸出しやすくするために、有機農産物の定義を米国の定義にあわせろと要求している。

「殺虫剤・農薬の残留許容限界をゼロにすることは不可能。だから米国並みに殺虫剤を投与しても、米国基準で有機農産物と認定されるのであれば日本でも有機農産物として扱え」と要求している。

 

今、話題なのはアフラトキシンに汚染されたとうもろこし。これを食べた乳牛から牛乳へと、汚染が移っている。

農林水産省の輸入飼料検査では、「検出されているが、基準値以下のので問題ない」という報告が毎年出されている。一方、厚生労働省管轄の輸入食品としての「とうもろこし」の検査では、毎年、米国産「とうもろこし」にアフラトキシン汚染で違反が見つかっている。汚染が見つかり、毎年、6万トン以上の米国産「とうもろこし」が廃棄処分となっている。厚労省の輸入食品の検査基準は、「アフラトキシンは検出されてはいけない」というのが基準。アフラトキシンは自然界に存在する最強の発がん物質でもある。

 

毎年、検査で米国産の人間がそのまま「食べるとうもろこし」はひっかかっている。食べるほうは、ほぼ全数検査をしており、全体の2%が汚染検出。

  

しかし、エサ(飼料)用とうもろこしでは農水省管轄検査で60件くらいしか検査していない。その限られた件数で、「基準超えの汚染無し」とされている。全数検査している食べるとうもろこしの汚染状況から考えても、エサ用はそれ以上に汚染されていることは確実。

ずっとエサ用とうもろこしの輸入を迫られてきた背景があり、検査体制もゆるくなっている。

 

 

6、国民の健康増進を目指すという政府の成長戦略「機能性表示食品制度」とは?

食品の機能性表示制度が、2015年4月、消費者庁管轄でスタートした。トクホは8000億円市場、機能性表示は2兆8000億市場と言われる。

「機能性表示を進めて成長戦略を」と記者会見でも発表し、安倍政権の政策のように言っているが、「1994年にできた米国のダイエタリーサプリメント法と同じように」と、1996年から「栄養補助食品」の項目で要求されているもの。安倍政権の独自政策ではない。

 

・機能性表示は何が問題か。

機能性表示食品は5月24日現在、21件届け出されており、ほとんどがサプリメント。機能についての説明は例えばひとつ目、「ラクトフェリンが含まれるので…内臓脂肪を減らすのを助ける」などと書かれている。このように消費者庁への届け出リストを見ると「Aが含まれる。Aはこんな機能があると報告されている」のセットがほとんど。これは最終製品での臨床試験がされていないということ。

 

「何の効用があるか」の表現は、トクホの宣伝と非常に似ている。6月以降商品がでてくるが、買い物する際、トクホと機能性表示なのか、消費者には分かりづらい。トクホは現在1147品目ある。おなかの調子を整えます、中性脂肪、血圧など病気の原因になる要素を取り除く…などが多いが、根拠は実験データが得られたことが前提。

 

機能性表示はそうではない。「○という成分が含まれます。○にはこんな効果があると報告されている」と効果がある成分が入っているというだけ。効果があるとは言っていないが、消費者に対して「効果がある」と勝手に思わせるもの。自主申告=企業責任で、機能性表示ができてしまうが、企業が責任追うものではなく、効果があると思って使ったのはあなたでしょ、という論理になる。

 

だが、機能性表示よりもトクホが優れているということになるのか?

例えば血圧。どのくらいの数値がよいのかも微妙。高すぎる場合は、下げるのに薬を使うが、その効果も微妙なものが多い。有意差あるといっても、2~3%程度。5~10年たってようやくわかるかどうか。薬であっても、専門家の判断ですら評価が分かれるものを、トクホや機能性表示で効果が出るなどは考えにくい。

 

米国でも、「科学的根拠がない」「有効性の実証に当たり、考慮すべきとされた点が考慮されていない」などの問題がすでに指摘されている。

  

これまで米国の規制緩和要求は、長期にあたって歴史的、構造的であり、日本経済・国民生活に強い影響を及ぼしてきた。 

 

「国内経済対策」として打ち出された規制緩和政策も、米国の要求事項と重複しており、決して日本政府が主導したものではないことがよく分かる。

 

(文責:ほんまにええの?TPP大阪ネットワーク事務局)