「ほんまにええの?TPP大阪ネットワーク」

私たちは、日本政府にTPP交渉における「国民への説明責任を果たす」こと、衆参農林水産委員会における「国会決議を遵守する」ことを求め集まった、大阪で活動する約30団体のゆるやかなネットワークです。FBページはこちらから→https://www.facebook.com/tpposakanet/

『たすけあいの保険「共済」 ~TPPでどうなる?』報告1「保険業界・金融業界の動向」7/28開催報告

2016年7月28日実施『たすけあいの保険「共済」 ~TPPでどうなる?』の開催報告、3人の報告者に分けて報告します。

 

報告1:「保険業界・金融業界の動向」

報告者:浦野 弘さん(金融労連)

http://tpposaka.hatenablog.com/entry/2016/08/06/160548

 

報告2:TPP協定第11章 金融サービスの内容と金融・共済」

報告者:樫原 正澄さん(関西大学教授、TPP大阪ネットワーク代表)

http://tpposaka.hatenablog.com/entry/2016/08/06/160925

 

報告3:「金融・共済業界の概要」

報告者:飯田 秀男さん(全大阪消費者団体連絡会)

http://tpposaka.hatenablog.com/entry/2016/08/06/161526

 

イベント案内→【6/30食品表示・7/28共済と保険】TPP学習会@森ノ宮 開催します - 「ほんまにええの?TPP大阪ネットワーク」

 

報告1:「保険業界・金融業界の動向」

報告者:浦野 弘さん(金融労連)

 

本来TPPは貿易の障壁をなくし自由化をめざしている。金融自由化は1970年代から開始しており、日米貿易交渉でも取り扱われてきた。ただし、アメリカだけの要請だけで進められてきたわけではなく、日本のメガバンクも同じような要求をしてきたことを、忘れてはいけない。

 

1、金融自由化とTPPの歴史

金利規制の自由化によって、横並びの金利は変わり、今では預入金額で金利を変えるなどできるようになった。業務分野も銀行、長期銀行、証券、信託等々の垣根があったが、規制がなくなり、事業の相互乗り入れとなっている。

国際通貨体制においては固定相場から変動制に変わり、外資の出資も基本的に自由にできるようになった。歴史的にみれば、日米政府間交渉に従って、日本国内の政策を実行しているといえる。

 

1993年の宮沢・クリントンとの包括協議に沿って1996年金融ビッグバン、金融自由化が進んだ。その中身は「預金から投資へ」という流れである。

消費者にとっては貯蓄資金の活用のための選択の幅は増えたが、元本保証のない商品が増えており、自己の責任が求められている。

 

2、世界の金融と課題

基軸通貨ドルの弱体化の中で、円を補助的貨幣として組み込まれているというのが実態であろう。その流れの中で、金利の収益よりも、手数料による収益を重視し、現在は投信販売などの手数料収益の割合がどんどん上がっている。

 

銀行だけでなく生保も保険も、新興国に高収益を求めて活動しており、グローバル化によって海外貸し出し比率は増加している。

 

家計部門の1700兆円の資金を、いかに投資に結び付けるか。いかに有効に使うことができるかが、私たちの取り組むべき課題である。

投機市場での金融機関の役割は胴元であり、利用者の損得に関係なく胴元は儲かり、所得・資産格差は拡大するのである。金融機関にとって、低金利で利ザヤは減っており、金貸しだけでは儲からないというのも事実である。

 

銀行で働き、組合活動として会社と春闘の交渉をした経験からいえば、会社側は「内部留保は、将来的リスクを考えると取り崩せない」と主張している。

では、「どれだけ貯める必要があるのか。上限は?」と聞くと、「上限に関する基準を持っていない」という。一方、銀行員は、家計部門における貯蓄から投資への切り替えノルマを課せられている。この金融資産を投資だけでなく、いかに「国民生活のために活用するのか」を考える必要がある。

 

デリバティブ取引は、金融商品から派生した商品である。サブプライムローンでみられたように、いろんな商品、リスクの高い商品も一括にして、一つの商品として販売するので、どこにリスクがあるのか分からないようになっている。

 

先物取引オプション取引スワップという形を組み合わして利用している。レートの予約の権利をオプションとして買うのか、それとも売ると言う権利を買うのか、判断に困難が伴う。通貨スワップの際に、将来は円からドルに換えたいが、その間にユーロをかませるということもあり、一般の人にはその仕組みが十分に理解できない。

 

お客さんにその権利を売るときは、逆のリスクヘッジをしており、デリバティブが行われることによって、2倍、3倍と何倍もの大きな取扱実績となり、それが統計となっている。

 

マイナス金利は国際市場の価格に大きく影響するだろう。住宅ローンの変動金利にも大きく影響する可能性もあり、10年物固定金利の利用について、個人としては一考しても良いかもしれない。

 

大きな資金が動くとき、関与する銀行は間違いなく儲かっているのが実態である。「貯蓄から投資へ」、それは日本だけでなくアメリカでも大きなせめぎあいの構図となっており、TPP協定においても同様である。

 

補足として、国際決済銀行が公表している外国為替取引市場の1日当たりの平均取引高は、2013年時点で5兆3450億ドル。年間で19系5092兆円、モノの貿易取引高が年間3500~4000兆円と比較すると50倍以上になる。

『たすけあいの保険「共済」~TPPでどうなる?』報告2「TPP協定第11章 金融サービスの内容と金融・共済」

2016年7月28日実施『たすけあいの保険「共済」~TPPでどうなる?』の開催報告、3人の報告者に分けて報告します。

 

報告1:「保険業界・金融業界の動向」

報告者:浦野 弘さん(金融労連)

http://tpposaka.hatenablog.com/entry/2016/08/06/160548

 

報告2:TPP協定第11章 金融サービスの内容と金融・共済」

報告者:樫原 正澄さん(関西大学教授、TPP大阪ネットワーク代表)

http://tpposaka.hatenablog.com/entry/2016/08/06/160925

 

報告3:「金融・共済業界の概要」

報告者:飯田 秀男さん(全大阪消費者団体連絡会)

http://tpposaka.hatenablog.com/entry/2016/08/06/161526

 

 

■報告2:TPP協定第11章 金融サービスの内容と金融・共済」

報告者:樫原 正澄さん(関西大学教授、TPP大阪ネットワーク代表)

 

TPP協定によって、保険・共済はどうなるのか

金融と言えば、一般の人は銀行が思い浮かぶが、TPP協定においては、あらゆる金融機関が入っている。農協の共済ももちろん入っている。ただ、具体的な中身は、政府資料にも書かれておらず分からない。

 

TPPの原則としては自由化の促進であり、貿易の自由化を実現することを目的としている。TPP協定では、金融サービスとは「金融の性質を有するいかなるサービスをも意味する」と記されている。

保険といえば、一般的には日本生命とかの民間保険会社と考えるが、TPP協定ではそれだけではなく、共済も保険業務に含まれる。また、「公的年金は入らない」とあるが、「政府の見解ではそのように読める」と言うことであり、本当に公的年金TPP交渉に入らないかは微妙であると考えられる。

 

これまで、他のFTA協定にも金融は取り入れられているが、TPP協定では、これまでと比較すると長く詳しいという特徴がある。しかし、TPP協定全体から言えば、抽象的であり短いのである。

金融の章だけでなく、その他、「第9章 投資」、「第10章 越境サービス貿易」、「第12章 商人の一時的入国」、「第28章 紛争解決」、「通貨事項共同宣言」などと関わってくる。その関係については、実際に交渉に携わった人しか、真意は理解できないのは、他の分野と同じである。

 

「所定情報の取り扱い(11.8条)」では、現地当局からの情報開示要求を拒否できる項目も入っている。また、「幹部職員と取締役会(11.9条)」では、締約国による金融機関の人的構成への介入は禁止されている。市民側においては、協定文があいまいで、判断が分かれるため、評価のむつかしい章である。

 

アメリカの狙いに注目することは重要なことである。在日米国商工会議所(ACCJ)などは金融自由化による収益確保を狙っている。

 

『たすけあいの保険「共済」 ~TPPでどうなる?』報告3「金融・共済業界の概要」7/28開催報告

2016年7月28日実施『たすけあいの保険「共済」 ~TPPでどうなる?』の開催報告、3人の報告者に分けて報告します。

 

報告1:「保険業界・金融業界の動向」

報告者:浦野 弘さん(金融労連)

http://tpposaka.hatenablog.com/entry/2016/08/06/160548

 

報告2:TPP協定第11章 金融サービスの内容と金融・共済」

報告者:樫原 正澄さん(関西大学教授、TPP大阪ネットワーク代表)

http://tpposaka.hatenablog.com/entry/2016/08/06/160925

 

報告3:「金融・共済業界の概要」

報告者:飯田 秀男さん(全大阪消費者団体連絡会)

http://tpposaka.hatenablog.com/entry/2016/08/06/161526

 

■報告3:「金融・共済業界の概要」

報告者:飯田 秀男さん(全大阪消費者団体連絡会)

 

「保険」と「共済」の共通点と相違点

まずは加入の対象が違っており、根拠法が違っている。

保険会社は保険業法を根拠法としており、金融庁が管轄している。JA共済であれば農業協同組合法を根拠法とし、農水省が管轄、生協共済であれば消費生活協同組合法を根拠法とし、厚労省が管轄している。

保険は営利を目的としており、出資者に対して配当が支払われるが、共済は営利を目的としていない。

 

2015年度の財務諸表で比較すると、日本一の保険会社である日本生命では、総資産63兆円、保険契約高253兆円である。都市銀行トップの三菱東京UFJ銀行では、総資産222兆円、預金が147兆円である。

一方、JA共済においては、総資産54兆円強、保有契約高281兆円であり、かんぽ生命では、総資産81兆円強、44兆円もの保有契約高を有する非常に大きなマーケットとなっている。

 

共済は絶対に破綻してはいけない構造となっており、もともと利益が大きく出る特徴を持っている。株式会社においては、利益は株主に還元することになっている。

共済が金融庁の管轄下になった場合にどうなるのかは、だれも正確に予想できないであろうが、加入者にとっては、これまでの有利な側面が削がれることになるだろう。

 

在日米国商工会議所の具体的な要求を見てみると、日本国内の共済への優遇を止めて、金融庁の管轄に移し、保険会社と同じ保険業法の適用に変えて、共済と保険会社は対等な条件で競争させるべきだと、提言している。

緩い規制環境におかれた共済は、個人保険分野においては30%ものシェアを占めており、これを問題だとしている。

また、JAグループの改革についても、安倍政権の改革を高く評価する一方で、まだ改善点が残されているとして、共済事業の改革を進めろと、提言している。

 

JAに株式会社化が導入されると、共済事業は続けていけるのか。

JA中央会は社団法人として存続し、共済事業は分離することが予定されている。生協においてはすでに、事業と一体だったものが、モノと共済は分離した形になっているので、まずはその方向に沿って進められるのではと考えられる。分離されたことで、生協の収益構造は変わったが、JA共済と比較すれば、極めて事業規模は小さかったので、単純な類推はできない。

金融業界からすれば、JA共済の市場は莫大であり、非常に魅力的な収益ターゲットとして映っているのであろう。しかし、JA共済だけでなく、将来的には労働共済など、小さい規模の共済も同じく、金融庁の管轄下に置かれることになるだろう。

 

 

金融庁管轄になるとどう変わるのか。

共済事業はそれぞれの根拠法に従って実施しているが、保険業法の適用になり、金融庁の管轄となれば、共済としての魅力(互助の精神)がなくなっていくであろう。

 

現在の損保業界の動向をみると、アメリカの団体から要望されて、日本においても保険料率を自由化した。事故率の多い若者階層には保険料が高くなり、事故率の低い年齢階層は安くなるなどである。

 

代理店の営業活動において、保険会社は取扱高の大小によって、代理店手数料を決めており、その差が大きくなっている。

 

保険会社にとっては、収益を維持しようとすれば、保険金の支払いを少なくすることが重要となる。

たとえば、自動車保険だと、「保険金(20万円、30万円とか)をもらうと、保険料が上がります」と、保険契約者に説明し、保険金を受け取らない方が得だと営業活動を展開し、保険金支払いを少なくするように働きかける。

共済なら、共済契約者に有利なように共済金を支払うが、これが金融庁管轄となれば、変更が起こると予測される。

 

生保業界において、企業年金、年金のしくみは、現在は全体的には「確定給付型」が主流となっている。年金原資の運用に失敗すれば、企業の債務負担額は大きくなる仕組みとなっている。

 

資金運用を一括して、一定の利率を維持しようとするのが、アメリカ型の「確定拠出型」である。手数料が増える上に、年金受給者が資金運用のリスクを引き受けることとなる。つまり、企業にとって、手数料で売り上げはアップし、資金運用損失のリスクが減るため促進されている。

 

単位JAにおいて、共済事業を分離した上で、JA共済事業は金融商品と同じく金融庁の管轄下となり、他の金融商品と同列に扱われるように変更されるという図式ではないか。

 

まずはJA本体の改革は決まっているので、スケジュールどおりに実施し、共済事業、信用事業、経済事業はバラバラにされるであろう。現在の生協における、保険窓口業務のようになっていくのではないかと考えられる。

 

共済であれば、税制上の優遇措置があり、共済制度の仕組みを作る際には、構成員の利益に合致するように構築できる可能性がある。

同じ事故であっても、共済であれば多く支払うことも可能であり、構成員の判断による、制度設計上のフレキシビリティが高いといえる。震災が発生した際にも、共済であれば、構成員の生活を優先して、共済金受け取りを早くするという判断もできる。

共済には、掛け金は安く、リスクの高低に関係なく同じ掛け金で、誰でも入れるというメリットがある。

 

労働共済の自動車保険の保険料の違いは明確である。大企業の保険料と共済の保険料と同じ程度であり、大規模団体の減免率と同程度となっている。企業保険では、企業規模による保険料負担額に違いがある。