「ほんまにええの?TPP大阪ネットワーク」

私たちは、日本政府にTPP交渉における「国民への説明責任を果たす」こと、衆参農林水産委員会における「国会決議を遵守する」ことを求め集まった、大阪で活動する約30団体のゆるやかなネットワークです。FBページはこちらから→https://www.facebook.com/tpposakanet/

『たすけあいの保険「共済」 ~TPPでどうなる?』報告3「金融・共済業界の概要」7/28開催報告

2016年7月28日実施『たすけあいの保険「共済」 ~TPPでどうなる?』の開催報告、3人の報告者に分けて報告します。

 

報告1:「保険業界・金融業界の動向」

報告者:浦野 弘さん(金融労連)

http://tpposaka.hatenablog.com/entry/2016/08/06/160548

 

報告2:TPP協定第11章 金融サービスの内容と金融・共済」

報告者:樫原 正澄さん(関西大学教授、TPP大阪ネットワーク代表)

http://tpposaka.hatenablog.com/entry/2016/08/06/160925

 

報告3:「金融・共済業界の概要」

報告者:飯田 秀男さん(全大阪消費者団体連絡会)

http://tpposaka.hatenablog.com/entry/2016/08/06/161526

 

■報告3:「金融・共済業界の概要」

報告者:飯田 秀男さん(全大阪消費者団体連絡会)

 

「保険」と「共済」の共通点と相違点

まずは加入の対象が違っており、根拠法が違っている。

保険会社は保険業法を根拠法としており、金融庁が管轄している。JA共済であれば農業協同組合法を根拠法とし、農水省が管轄、生協共済であれば消費生活協同組合法を根拠法とし、厚労省が管轄している。

保険は営利を目的としており、出資者に対して配当が支払われるが、共済は営利を目的としていない。

 

2015年度の財務諸表で比較すると、日本一の保険会社である日本生命では、総資産63兆円、保険契約高253兆円である。都市銀行トップの三菱東京UFJ銀行では、総資産222兆円、預金が147兆円である。

一方、JA共済においては、総資産54兆円強、保有契約高281兆円であり、かんぽ生命では、総資産81兆円強、44兆円もの保有契約高を有する非常に大きなマーケットとなっている。

 

共済は絶対に破綻してはいけない構造となっており、もともと利益が大きく出る特徴を持っている。株式会社においては、利益は株主に還元することになっている。

共済が金融庁の管轄下になった場合にどうなるのかは、だれも正確に予想できないであろうが、加入者にとっては、これまでの有利な側面が削がれることになるだろう。

 

在日米国商工会議所の具体的な要求を見てみると、日本国内の共済への優遇を止めて、金融庁の管轄に移し、保険会社と同じ保険業法の適用に変えて、共済と保険会社は対等な条件で競争させるべきだと、提言している。

緩い規制環境におかれた共済は、個人保険分野においては30%ものシェアを占めており、これを問題だとしている。

また、JAグループの改革についても、安倍政権の改革を高く評価する一方で、まだ改善点が残されているとして、共済事業の改革を進めろと、提言している。

 

JAに株式会社化が導入されると、共済事業は続けていけるのか。

JA中央会は社団法人として存続し、共済事業は分離することが予定されている。生協においてはすでに、事業と一体だったものが、モノと共済は分離した形になっているので、まずはその方向に沿って進められるのではと考えられる。分離されたことで、生協の収益構造は変わったが、JA共済と比較すれば、極めて事業規模は小さかったので、単純な類推はできない。

金融業界からすれば、JA共済の市場は莫大であり、非常に魅力的な収益ターゲットとして映っているのであろう。しかし、JA共済だけでなく、将来的には労働共済など、小さい規模の共済も同じく、金融庁の管轄下に置かれることになるだろう。

 

 

金融庁管轄になるとどう変わるのか。

共済事業はそれぞれの根拠法に従って実施しているが、保険業法の適用になり、金融庁の管轄となれば、共済としての魅力(互助の精神)がなくなっていくであろう。

 

現在の損保業界の動向をみると、アメリカの団体から要望されて、日本においても保険料率を自由化した。事故率の多い若者階層には保険料が高くなり、事故率の低い年齢階層は安くなるなどである。

 

代理店の営業活動において、保険会社は取扱高の大小によって、代理店手数料を決めており、その差が大きくなっている。

 

保険会社にとっては、収益を維持しようとすれば、保険金の支払いを少なくすることが重要となる。

たとえば、自動車保険だと、「保険金(20万円、30万円とか)をもらうと、保険料が上がります」と、保険契約者に説明し、保険金を受け取らない方が得だと営業活動を展開し、保険金支払いを少なくするように働きかける。

共済なら、共済契約者に有利なように共済金を支払うが、これが金融庁管轄となれば、変更が起こると予測される。

 

生保業界において、企業年金、年金のしくみは、現在は全体的には「確定給付型」が主流となっている。年金原資の運用に失敗すれば、企業の債務負担額は大きくなる仕組みとなっている。

 

資金運用を一括して、一定の利率を維持しようとするのが、アメリカ型の「確定拠出型」である。手数料が増える上に、年金受給者が資金運用のリスクを引き受けることとなる。つまり、企業にとって、手数料で売り上げはアップし、資金運用損失のリスクが減るため促進されている。

 

単位JAにおいて、共済事業を分離した上で、JA共済事業は金融商品と同じく金融庁の管轄下となり、他の金融商品と同列に扱われるように変更されるという図式ではないか。

 

まずはJA本体の改革は決まっているので、スケジュールどおりに実施し、共済事業、信用事業、経済事業はバラバラにされるであろう。現在の生協における、保険窓口業務のようになっていくのではないかと考えられる。

 

共済であれば、税制上の優遇措置があり、共済制度の仕組みを作る際には、構成員の利益に合致するように構築できる可能性がある。

同じ事故であっても、共済であれば多く支払うことも可能であり、構成員の判断による、制度設計上のフレキシビリティが高いといえる。震災が発生した際にも、共済であれば、構成員の生活を優先して、共済金受け取りを早くするという判断もできる。

共済には、掛け金は安く、リスクの高低に関係なく同じ掛け金で、誰でも入れるというメリットがある。

 

労働共済の自動車保険の保険料の違いは明確である。大企業の保険料と共済の保険料と同じ程度であり、大規模団体の減免率と同程度となっている。企業保険では、企業規模による保険料負担額に違いがある。

 

『たすけあいの保険「共済」~TPPでどうなる?』報告2「TPP協定第11章 金融サービスの内容と金融・共済」

2016年7月28日実施『たすけあいの保険「共済」~TPPでどうなる?』の開催報告、3人の報告者に分けて報告します。

 

報告1:「保険業界・金融業界の動向」

報告者:浦野 弘さん(金融労連)

http://tpposaka.hatenablog.com/entry/2016/08/06/160548

 

報告2:TPP協定第11章 金融サービスの内容と金融・共済」

報告者:樫原 正澄さん(関西大学教授、TPP大阪ネットワーク代表)

http://tpposaka.hatenablog.com/entry/2016/08/06/160925

 

報告3:「金融・共済業界の概要」

報告者:飯田 秀男さん(全大阪消費者団体連絡会)

http://tpposaka.hatenablog.com/entry/2016/08/06/161526

 

 

■報告2:TPP協定第11章 金融サービスの内容と金融・共済」

報告者:樫原 正澄さん(関西大学教授、TPP大阪ネットワーク代表)

 

TPP協定によって、保険・共済はどうなるのか

金融と言えば、一般の人は銀行が思い浮かぶが、TPP協定においては、あらゆる金融機関が入っている。農協の共済ももちろん入っている。ただ、具体的な中身は、政府資料にも書かれておらず分からない。

 

TPPの原則としては自由化の促進であり、貿易の自由化を実現することを目的としている。TPP協定では、金融サービスとは「金融の性質を有するいかなるサービスをも意味する」と記されている。

保険といえば、一般的には日本生命とかの民間保険会社と考えるが、TPP協定ではそれだけではなく、共済も保険業務に含まれる。また、「公的年金は入らない」とあるが、「政府の見解ではそのように読める」と言うことであり、本当に公的年金TPP交渉に入らないかは微妙であると考えられる。

 

これまで、他のFTA協定にも金融は取り入れられているが、TPP協定では、これまでと比較すると長く詳しいという特徴がある。しかし、TPP協定全体から言えば、抽象的であり短いのである。

金融の章だけでなく、その他、「第9章 投資」、「第10章 越境サービス貿易」、「第12章 商人の一時的入国」、「第28章 紛争解決」、「通貨事項共同宣言」などと関わってくる。その関係については、実際に交渉に携わった人しか、真意は理解できないのは、他の分野と同じである。

 

「所定情報の取り扱い(11.8条)」では、現地当局からの情報開示要求を拒否できる項目も入っている。また、「幹部職員と取締役会(11.9条)」では、締約国による金融機関の人的構成への介入は禁止されている。市民側においては、協定文があいまいで、判断が分かれるため、評価のむつかしい章である。

 

アメリカの狙いに注目することは重要なことである。在日米国商工会議所(ACCJ)などは金融自由化による収益確保を狙っている。

 

『たすけあいの保険「共済」 ~TPPでどうなる?』報告1「保険業界・金融業界の動向」7/28開催報告

2016年7月28日実施『たすけあいの保険「共済」 ~TPPでどうなる?』の開催報告、3人の報告者に分けて報告します。

 

報告1:「保険業界・金融業界の動向」

報告者:浦野 弘さん(金融労連)

http://tpposaka.hatenablog.com/entry/2016/08/06/160548

 

報告2:TPP協定第11章 金融サービスの内容と金融・共済」

報告者:樫原 正澄さん(関西大学教授、TPP大阪ネットワーク代表)

http://tpposaka.hatenablog.com/entry/2016/08/06/160925

 

報告3:「金融・共済業界の概要」

報告者:飯田 秀男さん(全大阪消費者団体連絡会)

http://tpposaka.hatenablog.com/entry/2016/08/06/161526

 

イベント案内→【6/30食品表示・7/28共済と保険】TPP学習会@森ノ宮 開催します - 「ほんまにええの?TPP大阪ネットワーク」

 

報告1:「保険業界・金融業界の動向」

報告者:浦野 弘さん(金融労連)

 

本来TPPは貿易の障壁をなくし自由化をめざしている。金融自由化は1970年代から開始しており、日米貿易交渉でも取り扱われてきた。ただし、アメリカだけの要請だけで進められてきたわけではなく、日本のメガバンクも同じような要求をしてきたことを、忘れてはいけない。

 

1、金融自由化とTPPの歴史

金利規制の自由化によって、横並びの金利は変わり、今では預入金額で金利を変えるなどできるようになった。業務分野も銀行、長期銀行、証券、信託等々の垣根があったが、規制がなくなり、事業の相互乗り入れとなっている。

国際通貨体制においては固定相場から変動制に変わり、外資の出資も基本的に自由にできるようになった。歴史的にみれば、日米政府間交渉に従って、日本国内の政策を実行しているといえる。

 

1993年の宮沢・クリントンとの包括協議に沿って1996年金融ビッグバン、金融自由化が進んだ。その中身は「預金から投資へ」という流れである。

消費者にとっては貯蓄資金の活用のための選択の幅は増えたが、元本保証のない商品が増えており、自己の責任が求められている。

 

2、世界の金融と課題

基軸通貨ドルの弱体化の中で、円を補助的貨幣として組み込まれているというのが実態であろう。その流れの中で、金利の収益よりも、手数料による収益を重視し、現在は投信販売などの手数料収益の割合がどんどん上がっている。

 

銀行だけでなく生保も保険も、新興国に高収益を求めて活動しており、グローバル化によって海外貸し出し比率は増加している。

 

家計部門の1700兆円の資金を、いかに投資に結び付けるか。いかに有効に使うことができるかが、私たちの取り組むべき課題である。

投機市場での金融機関の役割は胴元であり、利用者の損得に関係なく胴元は儲かり、所得・資産格差は拡大するのである。金融機関にとって、低金利で利ザヤは減っており、金貸しだけでは儲からないというのも事実である。

 

銀行で働き、組合活動として会社と春闘の交渉をした経験からいえば、会社側は「内部留保は、将来的リスクを考えると取り崩せない」と主張している。

では、「どれだけ貯める必要があるのか。上限は?」と聞くと、「上限に関する基準を持っていない」という。一方、銀行員は、家計部門における貯蓄から投資への切り替えノルマを課せられている。この金融資産を投資だけでなく、いかに「国民生活のために活用するのか」を考える必要がある。

 

デリバティブ取引は、金融商品から派生した商品である。サブプライムローンでみられたように、いろんな商品、リスクの高い商品も一括にして、一つの商品として販売するので、どこにリスクがあるのか分からないようになっている。

 

先物取引オプション取引スワップという形を組み合わして利用している。レートの予約の権利をオプションとして買うのか、それとも売ると言う権利を買うのか、判断に困難が伴う。通貨スワップの際に、将来は円からドルに換えたいが、その間にユーロをかませるということもあり、一般の人にはその仕組みが十分に理解できない。

 

お客さんにその権利を売るときは、逆のリスクヘッジをしており、デリバティブが行われることによって、2倍、3倍と何倍もの大きな取扱実績となり、それが統計となっている。

 

マイナス金利は国際市場の価格に大きく影響するだろう。住宅ローンの変動金利にも大きく影響する可能性もあり、10年物固定金利の利用について、個人としては一考しても良いかもしれない。

 

大きな資金が動くとき、関与する銀行は間違いなく儲かっているのが実態である。「貯蓄から投資へ」、それは日本だけでなくアメリカでも大きなせめぎあいの構図となっており、TPP協定においても同様である。

 

補足として、国際決済銀行が公表している外国為替取引市場の1日当たりの平均取引高は、2013年時点で5兆3450億ドル。年間で19系5092兆円、モノの貿易取引高が年間3500~4000兆円と比較すると50倍以上になる。

『自分で食べるものを選びたい ~食品の表示とTPP~』報告3「食品表示で懸念されること」

『TPPとくらしを考える学習会』
6/30(木)夜開催の『自分で食べるものを選びたい ~食品の表示とTPP~』開催報告を3人の報告者によって分けて報告します。

報告1「食品表示の監視指導の現場から」

   http://tpposaka.hatenablog.com/entry/2016/07/09/160544

報告2「TPP協定と食品の表示問題」

   http://tpposaka.hatenablog.com/entry/2016/07/09/161133

報告3「食品表示で懸念されること」

   http://tpposaka.hatenablog.com/entry/2016/07/09/165258

 

 

■報告3「食品表示で懸念されること」

報告者:飯田秀男さん(全大阪消費者団体連絡会)

 

TPPが決まったら、どういう食品が入ってくるか

厚生労働省が、輸入食品相談指導室における輸入相談実績の一覧を作成している。

 

これは、「これまで輸入したことがない物品」や「初めて輸入する事業者」などに対し、検疫所が相談業務を行っているもの。その相談事案を検査した結果、これだけ違反が起こっているという推移を示している(図表参照)。

 

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国別・品目別に表示されており、米国の違反件数が毎年一番多い。

 

2014年度は117件の違反であり、その半分以上が健康食品である。すなわち、「今の規制ルールでは輸入できなかったが、輸入したい、売りたい」という、事業者はたくさん存在していることを意味している。

未認可の添加物について、「日本で早く承認すべきだ」という、圧力が高まることが容易に予測される。

 

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 【厚労省】平成26年度輸入食品監視指導計画に基づく監視指導結果より

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/kannshishidoukextuka_26_zenntai.pdf

 

食品表示はどうなるか

実際にTPP協定が発効すれば、どういう懸念があるかを考えてみました。

「食品の一括表示」は非常に細かいため、変更するのは大変な作業であり、当面変更されることはないと思われます。

 

しかし、「健康増進法」、「景品表示法」の対象は広範囲であり、「なぜ変更のためにコストを払うのか」という内外の事業者の不満が高まれば、規制緩和の議論になるのではないか。

 

遺伝子組み換え食品はどうなるか

遺伝子組み換え食品」の現行の表示ルールは、そもそも「選択の機会」を保証するためであり、安全かどうかを消費者の選択に任せる観点からのものではない。

安全かどうかは、意見が分かれているため、安全性を軸にして表示のあり方を問題提起をすると、混乱することとなる。

 

 遺伝子組換え食品の是非を安全性だけで議論するのは難しい。

生物多様性の保護の観点や、自然界に存在しないものを人為的に創り出す行為煮の嫌悪感を持ち、倫理的に問題はないのか等を、問題提起している人もいる。

 

また、安全性に問題があったとしても、それを科学的に証明することは実質的にできないのではないか。

 

米国の連邦法では表示義務はないが、州法で表示するよう住民投票などで決まった州がいくつかある。しかし、連邦法でそれを無効にし、表示しない方向に進めようという動きがある。

 

TPPには、遺伝子組み換え食品の表示をどうするなどとは書かれていない。

遺伝子組み換えに関連しそうな協定文は、第8章TBTだけでなく、たとえば第2章でもでてくる。あちこちに出てくるので、全体像は実際に交渉をした人しか分からない。

 

SPSも食の安全で言えば、予防原則ではなく「科学的根拠」が基準になる。TBTでSPSを抑え込む形になるのではないか。しかし、それは各章が他の章とどう関係しているのか、他の章で隠されている問題は何か、勉強をより強めることが大事である。

 

ちなみに、「科学的根拠」とは、簡単にいえば「コーデックス委員会」の基準であり、そこではアメリカの判断が大きく影響している。

 

◇日米における食品表示を比べてみると

同じグリコのポッキーでも、表示に違いがある。たとえば、ビタミンなど栄養素が書かれている。「機能性表示」が昨年から変わった。もともと米国のサプリメント制度に合わせて、米国貿易障壁報告書で要求がでていた事項である。

 

消費者庁での検討会の意味

現在、消費者庁の3つの検討会が進んでおり、2016年秋に取りまとめるといわれている。

 

3つとも、何らかの形で「成長戦略」に関与しているのが特徴であり、企業が儲けることを前提として動いている検討会である。

当面は、日本企業のためのビジネスチャンスの提供ではあるが、TPP以降は海外事業者も同様の立場(内国民待遇)となり、米国企業の主張を聞くことは十分に想定される。

 

本検討会は3つとも消費者庁内に設置されている。

これまで制度を変える場合には、外部の意見を聴くために消費者委員会等に諮問し、答申を得て、政府が変更について判断するのが普通の手続きであった。それにもかかわらず、わざわざ外部に設置しなかったことには疑問が残る。

消費者庁の事務局主導で、議論する形を進めているのはなぜだろうか。委員会なら消費者庁は指導ができないことを考えると、さまざまな思惑があるのではないかとみている。

 

『自分で食べるものを選びたい ~食品の表示とTPP~』 報告2「TPP協定と食品の表示問題」

『TPPとくらしを考える学習会』
2016/6/30(木)夜開催の『自分で食べるものを選びたい ~食品の表示とTPP~』開催報告を3人の報告者によって分けて報告します。

報告1「食品表示の監視指導の現場から」

   http://tpposaka.hatenablog.com/entry/2016/07/09/160544

報告2「TPP協定と食品の表示問題」

   http://tpposaka.hatenablog.com/entry/2016/07/09/161133

報告3「食品表示で懸念されること」

   http://tpposaka.hatenablog.com/entry/2016/07/09/165258

 

 

■報告2「TPP協定と食品の表示問題」

報告者 樫原正澄さん(関西大学教授・TPP大阪ネットワーク代表)

 

食品表示を、TPP協定から考える

今回は、TPP協定の第8章「貿易の技術的障害(TBT)措置」を手掛かりに、食品表示問題を考えたい。

 

結論を初めに述べれば、政府の発表のとおり「TPP協定によって日本の食品行政の制度変更はない」といえるが、それはTPP協定において詳細・具体的に食品表示に記載されていないためである。つまり、今後の運用ならび交渉によって、食品表示制度は変更されるということである。

 

TPPのTBT章は、WTO(世界貿易機関)のTBT協定に準じて構成されている。全体的にみると「貿易促進を強調している」ことが特徴となっている。そこで、TPP協定の運用において、このTBTの精神(貿易促進)が生かされることとなる可能性が高い。

 

◇「透明性」の確保とは

第7章のSPS(衛生食品検疫)との関連をみると、従来の「透明性」はどちらかといえば「基準策定プロセスの公正性の担保と、それの各国への通知」という意味合いが強かった。

 

しかし、TPP協定第8章第11条「TBT小委員会の設置」においては、「透明性の確保」に関わって「利害関係者の関与」が記載されており、この現実的な運用が鍵を握ることになると考えられる。

 

海外の利害関係者という記述があるが、これはどう読んでも企業関係者のことを意味しており、具体的に運用した際には、日本での規制強化に反対することは必然となるであろう。このように、今後の運用に委ねられている「利害関係者の関与」が協定文に書かれており、問題を残している。

 

◇「TBT小委員会」の設置

WTOと同様に、TPPでも設置することになっている。ただし、委員会の性格や機能については、何も規定されていない。政府の説明のとおり、単なる情報交換の場であればよいが、そうはならないのではと推測される。

 

国内ルールを設ける際に「利害関係者の関与」を規定している。また、新たな規定を実施する60日前までに、相手国の利害関係者に意見を聞かねばならないとされており、日本の規制を強化しようとすれば、多くの解決しなければならない課題を抱えることとなる。

現実的には、規制緩和を促進する方向を強める危険性が高いといえる。

 

すでに、外務省は、2011年時点でTBTに関して、「透明性の手続き整備」や、「個別分野についての規定」について懸念を表している。これらの懸念についても、国会であきらかにすべきだ。

 

また、日米並行協議において、日本政府は、外国貿易障壁報告書の意向に沿った対応に終始しており、日本のこれまでの交渉経過や、食品行政を考えると、不安材料はいっぱいである。

 

『自分で食べるものを選びたい ~食品の表示とTPP~』 報告1「食品表示の監視指導の現場から」

『TPPとくらしを考える学習会』
6/30(木)夜開催の『自分で食べるものを選びたい ~食品の表示とTPP~』開催報告を3人の報告者によって分けて報告します。

報告1「食品表示の監視指導の現場から」

   http://tpposaka.hatenablog.com/entry/2016/07/09/160544

報告2「TPP協定と食品の表示問題」

   http://tpposaka.hatenablog.com/entry/2016/07/09/161133

報告3「食品表示で懸念されること」

   http://tpposaka.hatenablog.com/entry/2016/07/09/165258

 

 

■報告1「食品表示の監視指導の現場から」

報告者 Sさん(全農林大阪分会)

 

食品表示法ができたものの

 

2015年4月1日、食品表示法が施行された。これまで食品表示に関係する法律としては主に3つあり、①「食品衛生法」、②「健康増進法」、③「JAS法」である。その他、種々の法律がある。

消費者庁が設置され、主務官庁となって、食品表示に関わる法律を一つにまとめたものが、「食品表示法」である。

 

食品表示法」が制定されたことは、消費者行政にとって一歩前進ではあるが、積み残された課題もある。たとえば、中食・外食のアレルギー表示、インターネット販売、遺伝子組み換え表示、添加物表示等々である。

 

◇どうやって監視指導しているか

監視指導の現場では、2人一組で2時間を基本にして、店舗での抜き打ち検査を実施している。店舗の食品責任者とともに、店舗の表示義務のある商品について、たとえばプライスカードにその製造者の記載が正しく表示されているかをチェックする。

 

通報による、店舗の立ち入り検査も実施している。一般の検査と併せて、アウトパックという、他の業者が作って販売するケース、たとえばあさりについて、その業者を調査して、表示どおりのあさりの産地であるかを確認しており、不正が発覚することもある。

 

TPPによって食の安全に関する制度は変わらないと政府はいうが

TPPによって食の安全がすぐに変更されるというよりも、食の安全に関わる問題発生時に、TPP協定に基づいて新しい判断が下され、食の安全は変更されるのではないか。

 

オーガニック食品は普及しいているが、日本の基準は独自にあり、米国のオーガニック食品も日本の基準に適合しなければ、輸入できない。そこで、TPP協定発効後に、規制緩和・基準の統一化の可能性はあると思われる。

 

食品表示の監視員体制はどうなっているのか

食品表示監視2000人体制という目標もあったが、現実には監視員自体の減少は続いている。表示監視の基準は法律で決められているが、監視業務の方法は決められていない。

 その時の情勢によって、監視員の配置が決まる仕組みとなっている。

 

消費者庁が監視業務を統括するのがすっきりしているが、地方に出先機関がないため、何かあれば東京から出張することになるが、人員が決定的に足りない。人員整備されるまでの間は、農水省の出先機関が肩代わりしている面もあるといえるかもしれない。

 

しかしながら、農水省の出先機関職員の平均年齢は、すでに50歳を超えており、10年後は退職となるため、TPP協定締結後の食品表示に係る監視体制には不安が残る。

 

国内の監視体制としては、農水省が一番多く、都道府県市の保健所は独立して、食品表示の監視業務を担っている。しかし、人員体制に関しては公表されていないようである。

 

大阪府内で監視委員の資格を持っている人は110人程度であり、この数字から推測するしかない。ちなみに、輸入検疫は2人増えたが、406人しかいない。

 

 

【9/8 (木)夜開催!】『公共事業のしくみ、役割とTPP~地域経済はどうなるのか』@梅田

【9/8 (木)夜開催!】
公共事業のしくみ、役割とTPP~地域経済はどうなるのか』
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景気が良くなるって、「私たちのまわりでお金がまわる」こと。
これまで、公共事業は地域経済・地元の中小企業に、どのような影響を与えてきたのでしょうか。

公共事業の入札から執行までのしくみ、公契約条例の役割、地域経済との関係などを解説します。
TPP協定では外国企業の入札が増えることを想定しています。

外国企業の受注が中心となれば、「仕事がなくなる」「下請け」「孫請け」…となり、
地域に落ち、まわるお金はどんどん少なくなります。

今後の日本の「公共事業」がどうなるのか、いっしょに学んでみませんか。


◇日 時 :9月8日(木)18:30~20:30(18:00開場)

◇会 場 :大阪市生涯学習センター第3研修室(JR大阪駅前第2ビル5階)
◇話題提供:要請中
◇資料代:500円         


※準備都合上、できるだけ事前に申込をお願いします。
メールo-shoudanren@mb8.seikyou.ne.jp 
又は FAX 06―6941―5699
まで、お名前をお知らせください。

※『TPPとくらしを考える学習会』
安倍政権によって、規制緩和が急速に進む日本。
そこにTPPが発効したらどうなるのか。じっくりと考えてみたいと思います。

◇1回目は6/30(木)夜開催
『自分で食べるものを選びたい ~食品の表示とTPP~

◇2回目は7/28(木)夜開催!
「たすけあいの保険「共済」 ~TPPでどうなる?」

http://tpposaka.hatenablog.com/entry/2016/05/26/170048



◆主催:ほんまにええの?TPP大阪ネットワーク
http://tpposaka.hatenablog.com/
https://www.facebook.com/tpposakanet/